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物流達人

古賀 昭弘

環境省 環境カウンセラー、物流コーディネーター
古賀 昭弘

第9回目のコラム 2008.03.26

物流センターにおける効率追求と環境志向人材教育の両立 | 古賀 昭弘
   === ピッキング・ミスを例に === 

はじめに

 今日ほど「環境問題」が各種の企業団体、各種の集団で議論され、環境に関心を持つ人々が多数存在する時代はないであろう。
かつて、公害と呼ばれて限定的な範囲のなかで発生した事象(例:カネミ油症事件、水俣病など)が人々の生活を脅かしたことはあった。しかし、今日では、地域や人類に限定されることなく、地球規模で殆どの生命が、危機的な状況に置かれつつある。中でも、二酸化炭素に代表される温室効果ガスによる「地球温暖化問題」は喫緊の問題である。

1.「物流」・「ロジスティクス」・「環境」

 今日「9大地球環境問題」と呼ばれている環境問題の背景には、途上国を中心とした人口増加、資源・エネルギーの大量消費、不要物の大量排出・廃棄がある。
 産業界では、ソフトとハードの両面から「環境」に取り組んでいる。前者は技術開発・環境人材教育、後者は低公害機器の導入などである。
 「物流」においても、各種リサイクル法や改正省エネ法などによる環境規制が講じられているなかで、例えば簡易梱包化、その他環境にかかわる各種報告やモーダルシフトの取り組みにみられるように、物流実務担当者の環境に対する認識は深まりつつある。
 かつて多くの業種業界は、物流を包装、輸送、保管、荷役、流通加工に関連する情報の諸機能を総合的に管理しながら、調達物流、生産物流、販売物流、回収物流(静脈物流)などの対象物流領域を別々に管理していた。しかし今、これらさまざまな物流機能を統合して、需給バランスを図りつつ、顧客満足を向上させ、併せて環境保全、安全対策などをはじめとする社会的な課題にも応えるといった、高度で戦略的な考え方を軸にした運用、管理がベースになっている。つまり「発送すればよい」、「輸送すればよい」、「受領すればよい」といった個別の物流範囲に限定することなく、発送から受領までの物流のしくみ全体が最適で、しかも「環境にも配慮した運用、管理」が必要に迫られている。

2.物流センターと『グリーン経営』

 物流センターは、保管、荷役、包装および流通加工を中心に、効率的に荷物を扱うことが求められる作業現場施設である。
 その物流センターで、例えば業務上必要なスキャナーに使われている使用済みの乾電池を、亜鉛、マンガン、鉄などに再資源化したり、あるいは伝票類や事務書類を紙資源として活用するなどして、ゼロエミッション活動に取り組むことは、当然の取組みとして広く理解されている。また食品・医療品業界の物流でも、ゴキブリやねずみの餌になり易いダンボール箱をやめて、耐久性にすぐれたプラスティック容器にすれば、安全衛生管理面に加えて、環境に配慮したパッケージングが実現できる。さらには、フォークリフト用再生バッテリーを利用すれば、グリーンの購入を実現したことになる。こうした作業現場での環境志向の取組みを進めるべきだが、特定の物流センターだけで行なわれても、全社的に環境志向の「顧客の満足」を獲得できたということにはならない。
 「顧客の満足」を獲得するためには、管理職や一般従業員に任せるという現場主義だけでは限界がある。ロジスティクスは「戦略的な知見を持つ経営陣が先頭に立たなければならない」ということであり、「『戦略的な経営管理』を理解する経営陣」が『グリーン経営の旗』を振らなければならない。そして、他社が作り出し実行しているグリーン・プロダクトまたはグリーン・サービスの購入に依存するだけでなく、物流センター自らがグリーン・サービスを作り出し、顧客である荷主にそのサービスを提供していくといった積極的な姿勢が必要である。

3.「SCM」と「環境時代の物流センター」とは

 従来は、売り上げ至上主義に基づき、効率を追求して企業経営が推し進められてきた。しかし今は、「環境志向の顧客満足」を得るということに軸足を移して、環境問題への取り組むことが重要になってきている。
 SCM(サプライ・チェーン・マネジメント:供給連鎖管理)が荷主企業および物流企業において取り組まれている。供給者から需要者にいたる「調達、生産、流通および販売」の段階に属するすべての関係者が情報を共有して、最少のコストで適正な顧客満足を達成することを目指している。その結果、全体最適の実現を追求しているのである。
 物流センターに当てはめると、例えば、取り扱うモノのセンター内における滞留時間の短縮化、コスト面からみれば棚卸チェック等在庫管理に要する人数や時間の最少化である。
 ところで、在庫管理といえば、「在庫を無くす」ということをよく聞く。実際に在庫が無くなれば逸失利益が発生する。「無駄な在庫、つまり、市場・消費者が要求しないものを在庫しない」ことが重要である。「あらゆる意味における無駄の排除」が環境志向への第一歩である。物流センターにおけるピッキングで物流も、ピッキング方法、モノの棚付方法・・・等、よく分析、検討するなどして無駄の排除を意識する必要がある。
 物流センターにおいては、経営陣から従業員にいたるまで、すべての関係者が情報を共有した上で、日常業務にあたる必要がある。そうでないと環境対応といっても名ばかりに終わる。例えば、「ピッキング・ミスは、環境問題を増幅する」という『情報の共有』が必要である。つまりピッキング・ミスによって、商品を持ち帰るため、そして、再度商品を配送するためにガソリンがそれぞれ消費される。その消費によって発生する二酸化炭素が地球温暖化を加速する。このような事実を認識させる『物流センター』の存在が理想である。

おわりに ― 環境に敏感な人材を育むために ―

 ピッキング・ミスは、作業品質あるいは作業の効率性の視点からよく検討され、荷主からはクレーム対象となる。これはあくまでも社内的、契約上の問題である。しかしここまで述べてきたように、社会的課題に対応するべく「環境」の視点から、ピッキング・ミスを指摘する『物流センター』が必要である。
 一つの例としてではあるが、経営陣と従業員が、「ピッキング・ミスは環境問題と大きな関係を有している」と捉える発想転換が必要である。その結果、当該物流センターのピッキングを担当する従業員は、ピッキング業務に意義を見出し、ピッキング・ミスを無くす努力を積み重ねる。その努力の積み重ねが、「環境志向面からみた顧客満足の向上」に資することは言うまでもない。
 物流センターにおける究極の環境問題へのソフト面における対応は、「ピッキング・ミスはガソリンの浪費であること、そして、ガソリンの浪費は地球温暖化の元凶であること」を意識できる『環境に敏感な人材』を養成することである。情報共有を行い易く、そして環境志向の意識を社内に迅速に植え付けるためにも、経営陣を含めた環境人材教育が望まれる。

参考文献
 (1):齊藤実編「3PLビジネスロジスティクス戦略第13章」 白桃書房 2005年
 (2):奥村雅彦編「ケースでわかるロジスティクス第1章」日本経済新聞社 2004年
 (3):『物流』と『ロジスティクス』の定義については、日本規格協会JISハンドブック2006年版
     《62》物流

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