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物流達人

鈴木 信雄

熊本学園大学 
経済学部教授
鈴木 信雄

第12回目のコラム 2008.12.15

技術の進歩と物流の変化 | 鈴木 信雄

 時の流れと共に、物流の目的は変わらなくてもその目的を実現する方法は大きく変わってきた。目的を実現する方法はその時代の技術に依存しており、技術革新により物流技術も大きく前進してきたからに他ならない。 今後も物流の仕組み・内容は技術の進歩と共に変化していくであろう。そのような視点から物流の動向と熊本で起こっていることを眺めてみよう。


(1)グローバル化の進展

 陸・海・空における輸送機関の高速化・大型化が進み、大量輸送と輸送圏域の拡大を可能にした。港、空港、物流センター等における荷役機械の高度化・施設の大規模化・ユニットロードシステムの進展が、陸・海・空の結節点における取扱貨物の大量化・迅速化を可能にした。その結果、物流の広域化・グローバル化が進展し、国際規模で物流網が形成されてきた。かつては海外で生産・調達した商品を国内の物流拠点に集約してから国内全域に配送していた物流網が、今は韓国の釜山の物流拠点に集約して、そこから日本国内全域に配送する物流網に変わる動きが出てきた。このような変化は地方港に新たな役割をもたらしている。
 熊本県の物流拠点は以前は熊本だったが、今は鳥栖に集約され、熊本県が鳥栖からの配送圏域に入ってきている。九州の物流拠点は北部九州に集約され、北部九州からの配送圏域が広がり、今や鹿児島県と宮崎県を除いて九州全域に拡大してきている。道路の整備等と共に九州全域が北部九州の配送圏域に入るのは時間の問題と思われる。

(2)ロジスティクスの進展

 需要が多様化し、大きく変動するにしたがって、売れなくなった商品を廃棄するロスを防ぐため、必要なものを必要なときに必要な量だけ生産し、需要家に届けるニーズが増大した。このような変化を背景に、生産・情報技術の進歩が、需要動向をリアルタイムに把握して生産に反映させるシステムを可能にした。その結果、生産の効率化よりも、需要動向に合わせて商品を供給するロジスティクスの重要性が増大し、企業に浸透してきた。さらにPOSシステムや情報ネットワークの進展は、消費動向に合わせて、資材の調達から生産、卸し、小売の活動を同期化して最適な供給システムを構築しようとするSCM(サプライチェーンマネジメント)を可能にした。
 このような動きは、生産や物流、販売といった各構成部分の最適化だけではなく、調達から生産、物流、販売といった企業活動全体の最適化、さらに企業ごとの最適化ではなく企業間にわたって形成される供給システム全体の最適化を目指すものであり、目的を達成するための諸活動がシームレスにつながってきている。物流も物流活動だけの最適化ではなく、企業内や企業間において生産や販売活動とシームレスにつながり、全体としての最適化に貢献することが求められるようになった。生産や物流等のそれぞれのコストが安価でも、生産から消費にいたるまでのリードタイムが長くなり、需要変動による不良在庫が増えると全体としてコスト高の供給システムになる。生産や物流等の個別のコストが高くても、リードタイムが短くなり不良在庫が減少すれば、生産から消費にいたる低コストの供給システムが可能となり、全体最適化になる。需要の多様化・変動化はリードタイム短縮の重要性を増大させた。その結果、諸活動においてコスト要因より時間要因の重要性が高まっている。
 例えば熊本から阪九フェリーを利用する場合、高速道路の料金値下げにより交通量が増えて自然渋滞が生じ、北九州新門司までの輸送時間が30分長くなった。21時発のフェリーを利用するのに19時に熊本を出ていたのが18時30分に出発しなければならなくなった。そのため企業によっては当日の工場出荷が間に合わなくなり、料金値下げによるメリットよりも輸送時間増によるデメリットの方が大きくなっている。さらに阪九フェリーが21時発から20時発に変更になったため、熊本から大阪方面への当日出荷が難しくなってきている。また北部九州に集積している企業に納入する熊本地域の協力企業は、高速道路輸送が30分長くなることにより、南関注地域までしかジャストインタイムで納入できなくなり、南関以南にある企業は協力企業としての役割が困難になってきている。このようにコストが下がっても時間がかかることによるデメリットの方が大きい企業は今後多くなると思われる。

(3)業際化

 物流センターの流通加工で行われている組立や切断などの生産加工は、生産工程の最終段階で需要に合わせてカスタマイズする生産業務であり、値札付けや詰め合わせなどの販促加工は、販売のための業務である。納品と同時にドライバーが機器の据え付けや設定、テストを行うことなども生産分野の最終段階の業務であり、納品と同時に商品代金を回収する精算業務は以前から行われていた。このように物流は物流と接している生産や販売・精算等の業務を取込んで業務内容を拡大している。これは従来の技術の上に構築されていた生産・物流・販売の領域が技術の進歩と共に崩れ、新しい技術に適したそれぞれの領域を再構築しようとする動きであり、従来の境界から新しい境界に移行しつつある過渡期といえよう。さらに物流とその周辺業務が広範囲にわたって一体化し、新しい分野を形成したのが3PLである。3PLは受発注から物流センター業務、輸配送や在庫管理、システム構築、企画提案、生産や販売業務との連携による広範囲で総合的なロジスティクスの構築などを行い、企業活動や企業間活動の最適化を図ろうとする。このような分野は新しい技術、特に情報技術の進展により可能になった。3PLは物流と物流に接する生産・販売業務を対象として情報技術を駆使して構築されるため、物流会社の他に商社や情報会社からの参入がみられる。

(4)三重苦の物流業界

 コピー機やファクシミリ、ワープロなどの事務機器が出てきたときは、事務作業が楽になると言われたが実際にはそういうことはなかった。事務機器を使うことにより、時間当たりに処理できる事務量が増え、その分仕事が増えた。機械化により、今まで出来なかった仕事が出来るようになり、生産性が向上した。新しい技術が開発されると、新しい技術を活用して今まで以上の業務を同じ人員、同じ時間で処理することが可能になる。
 物流量が増えず、運賃単価が下がり、コストが上昇する三重苦の物流業界において、従来と同じ業務を続けていては、収入はいつまで待っても増えることはなく、利益は減り続ける。量が増えない以上、量を増やす代わりに新しい分野の仕事を取り込んで収入を増やすしかない。しかもその為に人手を増やしたり、コスト増になってはいけない。
 技術革新が続くかぎり、生産・販売・物流の関係は新しい技術に適したしくみへと変化を続ける。新しい技術の活用に適した形態へと、荷主業界と物流業界の業務の再配分が行われている。技術の進歩により引き起こされる必然的な変化に適応できなければ、企業の存在意義が薄れて収入減が続くであろう。新しい技術による業務の再配分に適応して業容を拡大できるかどうかが、これからの物流業界に課せられた課題である。3PLやSCMなども新しい技術による業務の再配分という動きを背景として誕生してきたともいえよう。


注:熊本県北西に位置し玄関口として発展している地域で九州縦貫高速自動車道南関インターチェンジがある。

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