
(株)ロジスティクス・サポート&パートナーズ
専務取締役
中根 治
第13回目のコラム 2009.2.2
物流現場におけるスタッフのモチベーション管理の仕方・あり方 | 中根 治
世界的に経済環境が悪化する中、多くの企業が抜本的な物流体制の見直しを行っています。特に現在は、物流企業に対して全面的に物流業務を委託する「アウトソーシング」という流れと、再度自社で物流業務の一切を行う「内製化」の2極化が進んできております。
物流という仕事は基本的に労働集約型産業であり、メーカーと小売りの間にあって、高い品質要求と、不規則に変化する仕事量に対応していくことを求められます。
特に、物流現場運営における最重要課題は労務管理であり、限られた時間・人員の中で、一人ひとりのやる気をいかに出し、働いてもらうか、その巧拙が物流企業の生命線です。
私は仕事柄、さまざまな物流現場を見させて頂く機会があるのですが、働く人たちが生き生きとしていて儲かっている、いわゆる「良い現場」には次のような共通項があります。
(1)社員とスタッフの間に信頼関係が成立している
(2)リーダーが、現場ですべきことを熟知していて、明確な数値目標がある
(3)スタッフが、それぞれの役割を全うして仕事している
本稿では、どうすればこのような「良い現場」を作ることができるのか、また物流現場におけるスタッフ(パート・派遣社員)のやる気を高めるための、モチベーション管理の仕方、あり方について触れたいと思います。
● 「良い現場」の礎は信頼関係から
「良い現場」には社員とスタッフの間に信頼関係がしっかりと築かれています。この信頼関係とは、具体的には「お互いに最初に交わした約束事が守られている」状態のことです。
社員は採用するスタッフに対して、①仕事の内容、②仕事のやり方、③採用期間内の定量的な達成目標、④採用期間・時間、⑤賃金の額、休日他、⑥働く環境(福利厚生)を最初に言葉で伝え、場合により導入教育や予備訓練などを行います。また、朝礼や終礼など、リーダーの思いの伝達の場が確保されています。
「良い現場」はこの採用から働き始めまでのルールがしっかりと決まっており、このため働く側の満足度も高く、定着率も高い傾向があります。
逆に悪い現場は、このような採用から導入教育について、特に教育も受けていない現場リーダーに任せきりにしている、現場損益の見通しが甘かったために、無理なスケジュールや作業目標を課している、リーダー以外の外部からの意見により方針や条件がたびたび変わる、など、主に雇う側の体制不備によって約束事が守られない状況にあるケースが多いようです。このような環境は働く側のモチベーションを著しく下げます。
「良い現場」を作り上げるために最も重要なポイントは、
・経営者やリーダーが、しっかりとした損益計画に基づいて採用方針を決めること
・ワークスケジュールを作成し、計画に基づいた人材活用を心がけること
・採用をなるべく人任せにせず、一人ひとりに条件を直接伝えること
・採用後もコミュニケーションの労力を惜しまないこと
になるかと思います。特にワークスケジュールの作成は、安定した雇用のために必須の取り組みになりますので、単純作業の繰り返しの現場であっても作成しておくべきでしょう。
特に物流現場は扶養控除の範囲で働きたいという主婦を活用している現場が多いため、油断をすると、最繁忙期である年末に働いてももらうことができない事態に陥ります。
● パートタイマー・派遣社員の方に活躍してもらう仕組みづくり
2008年4月1日より、改正パートタイマー労働法が改正されました。この法律改正以前までは、パートアルバイトと言えば「社員より安い給料で、社員同様の働き方をしてもらえる人材」という意識が雇う側にありましたが、現在は「社員と同じ働きを求めるならば、その給与は社員と同じであるべきである」という考え方に法は変化しています。
この法改正を前提に、パートタイマーの方のモチベーションを上げる仕組みをどのように作っているか、他社の事例を見てみましょう。
(1)年間雇用契約を結ぶことにより、労働時間の調整をスムーズした事例
躍進著しい3PLであるH社では「アコーディオン方式」と呼ばれるパートタイマー活用手法があります。これは、扶養の範囲内で働きたいパートタイマーと年間の雇用契約を結ぶ条件として、勤務時間をH社側が取り決めます。このため、仕事がない場合は早上がりもありますし、残業もお願いすることもありますが、年間の給与は103万円を保障するというものです。
このことにより、パートタイマーには雇用の安定がもたらされ、雇う側は人件費の変動費化が可能になるのです。
(2)師弟(メンター)制度で能力の早期向上を達成した事例
ある物流企業の現場では、入社した人材は、社員、パートタイマーの別を問わず、先輩が教育担当となり、新入社員のフォローを密接に行うことで早期にスキルアップを図る仕組みがあります。これはマンツーマンの場合もありますし、チーム制の場合もありますが、物流現場では社員の人数が少ないことから、パートタイマーがリーダーとなって教育やカウンセリングを行う場合もあります。このことにより、より多くの時間を身近な先輩スタッフが密着することで、悩みや課題をタイムリーにつかみ、解決していくことが可能になりました。
アパレルの装飾加工などの複雑な流通加工やコールセンターなど接客業務などは非常に効果が高い手法です。
(3)リーダー体験をさせることで当事者意識を醸成する事例
物流企業B社では、1日に朝礼・昼礼・終礼の場面で、各現場から進捗状況、あるいは売上報告をしてもらう現場があります。また前述したH社では、一日班長制度という、リーダー体験をルールとしてさせる仕組みがあります。
これは業務の進捗状況や簡易な損益状況を情報共有することで、スタッフにも等しく当事者意識を育んでもらうために行っているもので、体験したスタッフは、数値目標があることで、はっきりと仕事に向かう意識に変化が出てきて、自発的にさまざまな改善案が出るなどの効果が出ています。
● 軽作業請負・人材派遣企業の活用手法
軽作業請負、および人材派遣業界もパートタイマーと同様、様々な問題が噴出したことで、大きな法改正が近々予定されています。
軽作業請負・派遣人材はパートタイマーと違い間接雇用であり、指揮命令を直接することはできないため、現状は人材派遣会社の現場管理者との連携が、合法的かつ効率的な人材活用になってきます。
現在は人材派遣の2009年問題もあり、今後派遣会社は請負業に転ずる企業も多くなると予想されます。その際は庫内業務の現場運営に明るく、専門分野に強い企業がシェアを獲得するでしょう。ただし、これまで派遣人材に対応してもらっていた業務は、比較的補助的・部分的な作業が多く、請負に契約形態を変えた場合、指揮命令系統に課題が生じます。これらをクリアしていくために、しばらくは各社試行錯誤が続くものと思われます。
最後に、2009年は雇用のありかたに大きな変革が生まれる時期です。人材活用は採用単価の比較ではなく、スタッフ一人ひとりの「働き方」「当事者意識」によって差がつく時代になりました。このような時代だからこそしっかりと現場運営の計画を立て、安心して働ける職場を作っていくことがますます見直されることでしょう。
