
(株)アルノ
新原 達也
第15回目のコラム 2009.8.28
マテハン導入時の採算評価と導入のポイント ―現場運用と物流管理の視点から― | 新原 達也
1. はじめに
そもそも,マテハンは,物流センターの付加価値向上,他社との差別化,ローコスト・オペレーション,商品の安定的な供給,生産性の向上等を目標とし,各企業や各現場で導入されてきた.
しかし,マテハン導入の失敗事例を聞くことも少なくない.何が原因で失敗するのだろうか?
過剰設備となり使い勝手が悪く,また月々の電気代やメンテナンス費用が倍増し,ローコスト化どころか,コストアップしてしまうケース.
逆に費用を抑制するため,必要なマテハンまで導入しなかった結果,生産性や品質が向上しないといったケース.
あるいは,物流現場の効率化や作業品質の向上のためにマテハン導入を検討していたのに,「どうせやるなら,最新鋭の設備を」ということで,いつの間にかマテハン導入が目的になるといったケースまで,失敗要因は多種多様である.
このような失敗をしないためにも,マテハン導入時の投資採算評価と導入のポイントについて整理する.
2. 投資採算を評価する
2.1 物流の収支概念が投資採算のポイント
マテハン導入の失敗事例を見てみると,物流センター作業を支援するためのマテハン投資に悩むケース,多大な投資をしたものの効率化がうまく進まないケースが多く見られる.
これらの課題は,物流センター収支マネジメントに起因していると思われる.
直接作業費(物流センター人件費)は,物流センターで管理すべきコストであり,この収支管理なくして,物流センター管理は不可能といっても過言ではない.
表1は,物流センターの収支管理表の一例である.
物流センターの付加価値(物流収入―配送費=センター付加価値)を明確にし,配送コストと切り分けた管理指標を提示している.
物流管理には,配送費との総合コスト管理が必要なことは言うまでもないが,物流センターコストを区分し,物流センター内で管理すべき責任領域を明確にすることが,物流センター収支マネジメントの原点となる.
2.2 物流センターコストの3つの視点
物流センターコストを変動費(直接作業費など),加工費(設備投資など),間接費の3つに区分し,物流センター粗付加価値からそれぞれのコストを差し引き,限界利益,正味利益,売上総利益のどの段階で利益が出ているかを管理することである.
特に,物流センターでのマテハン導入を検討する際には,その投資を行うことによって,正味利益が下がらないかを厳しくチェックする必要がある.
つまり,加工費の増加分だけの変動費(直接作業費)を下げることができるかどうかが重要なポイントとなる.
2.3 中長期的に投資採算をチェックする
まず,物流センターにマテハンを導入した時と,それ以前のランニングコストを算定しておく.
ランニングコストの把握の方法としては,新運用のどこが改善されたかが見つけ出せるようにする.
物流作業のための人件費がどれくらいなのか,マテハンのための減価償却費がどれくらいなのか,などを数値で把握できるようにする.
計画初年度から予定計画年度(例:5年後,10年後)までのランニングコストが,現状維持のシステムと新システムにした場合で,どのように変化するかをチェックする必要がある.
3. マテハン導入時のポイント
3.1 マテハン導入の目的
ところで,マテハン導入時の選定は正しく出来ているだろうか?
まずマテハンを導入する企業で,その目的を明確にする必要がある.
【 導入の目的 】
① 無人化
② 省力化
③ 作業ミスの削減
④ スペース効率の向上
⑤ 稼働率の向上
⑥ リードタイム短縮 等,
これらの目的に対して,目標を明確にし,具体的な数値で,達成度を評価することが必要となる.
3.2 前提条件の整理が,導入成功を左右する
物流センターが本稼働して,当初計画と想定が異なる事態になり混乱することがないだろうか?
以下,具体例を挙げて説明する.
【 マテハン導入における想定差異ケース 】
①予測していた物量が通過せずに,設備の稼働率が低く,結果,センター収支が赤字状態となってしまった
②自動化しすぎたため,突発の作業オーダーに対して柔軟的に対応出来ない運用となっている
③各作業工程間のラインバランスが取れず,結果ボトルネック箇所の生産性に引きずられ,センターの全体生産性が上がらない等
上記の問題を解決するためにも,当初計画と実際との想定の差異(何が変化したのか?)を正確に把握することが大事である.
【 計画時における前提条件(例) 】
●荷姿条件
●作業タイムスケジュールの条件
●数量条件
●作業フロー条件
図1のように,物流センターの作業の流れを記述する.

3.4 サービス水準とマテハン選定
表2のように,センターの物流品質水準の目標を何%に設定するかによって選定されるマテハンは,絞り込まれてくる.
物流品質を求めすぎて,過剰投資にならないように,特に物流部門と営業部門が,実現可能なレベルを事前に協議・共有することが重要となる.

また取扱アイテム数と出荷数量により,ピッキング方法を選定する.(図2参照)
その際に人が得意とするところと,機械が得意とするところで,マニュアルと自動化が共存を見出した仕組みを検討する.

4. 汎用性の持てるマテハン設計に留める
物流センターの作業を見ると,荷受け・格納・流通加工・ピッキング・検品・荷揃え・積込み作業など,人に依存せざるを得ない作業が多い.
少子高齢化や労働人口減少の進む今後の物流現場においては,人手不足と作業者の高齢化が避けられない.
社会的な面からも作業する人に焦点を当て,人とマテハンが共存できる運用の仕組みを構築することが非常に大事である.
その際,全てを自動化するのではなく,運用のフレキシブリティがある仕組みを検討する必要がある.
5. まとめ
マテハンを導入する際,人+マテハン(設備,情報システム含む)が一体となった運用の検討が重要である.また,計画がある程度進んだ段階では,現場担当者も巻き込んで運用を検討し,トラブルが発生した場合の対応等についても,対策を考えておくことが必要である.
なぜなら,マテハン導入が目的ではなく,マテハンを導入することにより,物流現場の効率化や作業品質を向上されることが目的だからだ.
実際に業務に携わる現場の責任者や担当者の意見を聞き,実運用に沿ったマテハン導入が望ましい.
ただし,そのためにはお金をいくらでも使って良いというものではない.トータルな視点からの物流センターの採算管理を強化することが,マテハンの投資採算の適正化にも繋がると言える.
